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出版不況でも利益50%増!老舗書店「有隣堂」のYouTube×IP 生存戦略【企業YOUTUBEランキングシリーズ】 

〜企業としてYOUTUBEを成功させたトップランクに入る企業〜

創業1909年。100年企業が見つけた「本を売らない」戦い方

「業界全体が右肩下がりで、打つ手がない」

もしあなたが成熟産業でのビジネスモデル転換に悩んでいるなら、神奈川県を中心に展開する老舗書店有隣堂の事例は、希望の光となるでしょう。

多くの書店が閉店を余儀なくされる中、有隣堂は「YouTubeでのファン作り」と、そこから派生した「IP(キャラクター)ビジネス」によって、驚くべきV字回復を遂げています。

1. 数字で見る「稼ぐ力」の復活

まずは、客観的なデータで有隣堂の現在の立ち位置を確認しましょう。2024年の最新決算では、驚異的な利益率の改善が見られます。

【最新実績データ】 2024年8月期 決算

売上高520億7,400万円 (前年比 0.1%増)
営業利益3億5,930万円 (前年比 50.4%増)
経常利益4億3,286万円 (前年比 51.4%増)

POINT売上規模は維持しつつ、利益が約1.5倍に急増
POINTGIGAスクール構想の特需終了後も、収益体質が強化されている

※つい先日も偉業を達成している!

2. 有隣堂しか知らない世界:3つの成功要因

この利益改善の裏には、公式YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」の存在があります。

① 企業の建前を捨てた「正直な」発信

番組のコンセプトは「有隣堂が愛するものを、嘘偽りなく紹介する」こと。「忖度」や「やらせ」が一切ない姿勢が、現代の視聴者に刺さっています。MCを務めるキャラクターも強烈です。

R.B.ブッコロー(MC)

有隣堂の公式YouTubeキャラクター。「インテリジェンスなミミズク」を自称。

  • 性格: 好奇心旺盛で、思ったことを口にしてしまう毒舌家。
  • 年齢: 5歳くらい(諸説あり)
  • 役割: 企業チャンネルの「堅苦しさ」をぶち壊す象徴。

② 社員を「タレント化」する偏愛力

動画の主役は、文房具や書籍のバイヤーである「社員」たちです。「文房具王になり損ねた男」や「キムワイプを愛する社員」など、個性的すぎる社員が自分の偏愛を語り尽くします。

彼らの熱量に触発され、紹介された商品は次々と完売。視聴者は「商品」ではなく「人」にファン(通称:ゆーりんちー)として定着しています。

③ コンテンツを「商品化」するIPビジネス

ここがビジネスとして非常に巧みな点です。YouTubeの人気を単なる「認知拡大」で終わらせず、しっかりと「収益化」につなげています。

  • オリジナルグッズ販売: ブッコローのぬいぐるみ、Tシャツ、ボールペンなどを販売。これらは「本」よりも利益率が高い商材です。
  • LINEスタンプ: ブッコローの毒舌スタンプを販売し、デジタルコンテンツでも収益を確保。
  • 書籍化: 『老舗書店「有隣堂」が作る企業YouTubeの世界』など、自社の取り組み自体をコンテンツとして出版。

3. 経営戦略としての「多角化」

YouTube以外の事業も見逃せません。有隣堂は「本を売る」以外の収益源を確実に育てています。

B2Bコンサルティング事業

自社のYouTube成功ノウハウを体系化し、他企業の広報・マーケティング支援を行うコンサルティング事業を開始。「ノウハウの外販」という新たなキャッシュポイントを作りました。

店舗の再定義と外商

売上の大きな柱である外商(B2B販売)では、オフィス家具や学校用タブレットなどを販売。店舗では、カフェ併設型の「STORY STORY」や、雑貨比率を高めた店舗を展開し、顧客体験価値を向上させています。

4. 経営トップのビジョン

松信健太郎社長は、これからの書店のあり方について次のように語っています。

「書籍以外の力を借りて書籍を売る。そして、書籍を売ってきた信用力で書籍以外を売る」
「変化を恐れず、本を売る店を増やし、文化を守り続ける」

明日から使える3つのヒント

有隣堂の事例は、私たちに「企業のあり方」を問いかけます。

  1. 正直であれ: 飾らない本音の発信こそが、最強のブランディングになる。
  2. IPを持て: 自社の強みやキャラクターを資産(IP)化し、複数の収益源を作る。
  3. 体験を売れ: 「モノ」ではなく、そこにある「物語」や「偏愛」を届ける。

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